化学研究所附属 「先端ビームナノ科学センター」発足

 平成16 年4 月1 日より、原子核科学研究施設を構造解析基礎研究部門I、IIとの連携による発展的改組により「先端ビームナノ科学センター」が発足した。センターの構成は「粒子ビーム科学」「レーザー物質科学」「複合ナノ解析化学」「構造分子生物科学」 の4 研究領域からなっている。それぞれの研究領域でイオンビーム、レーザービーム、電子ビーム、X線といった従来からの固有の基礎研究を深めるのは当然のこと として、これらのビーム間の有機的結合を図り、境界領域の開拓を大型の機器を扱うビーム科学の分野において積極的に推進する拠点としてこのセンターを位置 づけている。基礎科学分野や原子力分野で開発された極限ビームを、物質の極微の構造の探求や核融合の達成といった本来の目的に加えて、科学の他の分野への 応用といった観点からも捉えるアプローチが本センターの特徴といえる。
 従来の個別科学が布地の「縦糸」とすれば、新しいセンターの提供する「ビーム」は布地の「横糸」的存在ととらえることが出来る。新しいセンターは化学研 究所の各研究領域の専門間にまたがる研究手段を提供することにより、学際研究の芽を育てる役割をも果たしていきたいと自負している。
 なにぶん、全国的にも例をみない大型機器を伴う境界領域の立ち上げを目指すセンターを学内措置として立ち上げているので、予算、マンパワー等に関して今後の努力が肝要であるが、関係する先生方のご協力を賜り、世界的にみてもユニークな成果を1 日も早く化学研究所の先生方共々世界に向けて発信出来る日が来ることを祈念している。
 センターの発足に当たり、並々ならぬご尽力を頂いた高野所長をはじめとする化学研究所の先生方と京都大学本部、宇治地区事務部の方々に心から感謝申し上げると共に、今後とも一層のご支援、ご指導、ご鞭撻を賜るようお願い申し上げたい。

化学研究所附属先端ビームナノ科学センター長  野田 章

[左写真]
山田聰 放射線医学総合研究所加速器物理工学研究部長、イゴール・メシュコフ ロシア連合原子核研究機構教授、辻文三 京都大学副学長、笹尾登 京都大学理学研究科長、冨田博之 京都大学人間・環境学研究科長らとともに

[上センターロゴ]
量子ビームのイオンビーム(I)、レーザービーム(L)、電子線(E)、X 線(X)の有機的な融合をイメージしている。横線は化学、生物、医学、物理などの分野を表し、上記ビームと編み目のように結合。これらの分野を横断的に結 び、新しい学術を創成しようとの意味がある。また、7本の横線は先端ビームナノ科学センター以外の化学研究所の5 研究系とバイオインフォマティクスセンターおよび元素科学国際研究センターを表している。