環境物質化学研究系

環境 Environment

生命の源である水と水圏環境や微生物・酵素が作る環境調和物質、環境に優しい有機デバイスに関し、化学の切口から総合的に研究する。

主な研究は以下の通りです。(1)新規有機デバイスの設計・創製とその基礎科学の構築。固体NMR・ DNP-NMRによる構造-有機デバイス機能相関の解明。(2)微量元素の水圏地球化学、新規な選択的錯生成系。(3)機能性薄膜の構造解析のためのMAIRS法の開発と、有機フッ素材料の物性理解を可能にする物理化学の構築。(4)微生物の環境適応機構の解析と応用。細菌生体膜の形成と機能発現を担う分子基盤の解析。


(梶研)

有機材料の機能を分子・原子のレベルから理解することを目的とし、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)を中心に基礎研究を進めている。有機合成により得た材料をプロセシングにより機能化させ、あるいは、デバイスを創製し、優れた光・電子特性を発現させるとともに、固体NMR・動的核偏極NMR (DNP-NMR)・量子化学計算による精密構造・ダイナミクス解析を行い、機能と構造の相関解明を行っている。

有機EL 発光材料(Alq 3) の固体NMRスペクトル。meridional 体とfacial体の異性体状態の違いにより発光波長が変化する。

(宗林研)

(1)微量元素の水圏地球化学:微量元素の多元素同時分析法、同位体比分析法、化学種別分析法、現場分析法を開発する。海洋、湖沼における微量元素の時空間的な分布と、それが生態系へ及ぼす影響を明らかにする。微量元素をプローブとして、海底熱水活動、地下生物圏、および古海洋の研究を行う。(2)イオン認識:新しい認識機能を持つ配位子、イオン認識系を設計、合成し、その機能を明らかにする。

(長谷川研)

PTFEに代表される有機フッ素材料(PFAS)は、分子構造と物性発現の関連がほとんど分かっていなかった。当研究室では多くの謎めいたPFASの物性を統一的に説明可能な階層双極子アレー(SDA)理論を世界に先駆けて提唱した。炭化水素と根本的に異なる学理をもつPFASの科学を、最先端の分光法や結晶解析法により研究している。分光法として用いるMAIRS法も当研究室で生まれた分光法で、非晶の分子集合を明らかにできる唯一の手法である。

(栗原研)

微生物のユニークな新機能の開発とその分子基盤の解明を行っている。特に、(1)極限環境微生物の環境適応を担う分子基盤の解明と応用、(2)微生物が生産する有用酵素の機能解析と応用、 (3)生体膜の構築と機能発現のメカニズム、細胞外膜小胞の形成機構解析と応用に関する研究に取り組んでいる。

(上図)生体膜における脂質分子の挙動(下図)微生物による細胞外膜小胞の分泌高生産