所長挨拶
(生体機能化学研究系 生体分子情報)教授

化学研究所(化研)は、京都大学で最初の附置研究所として1926年に設立されました。以来、その設立理念「化学に関する特殊事項の学理および応用の研究を掌る」を堅持しつつ、化学を中心に物理から生物、情報学に及ぶ広い分野を取り込みながら、基礎科学に重点を置く先駆的・横断的研究を進めてきました。現在、専任教員約90名からなる30研究領域が、物質創製化学、材料機能化学、生体機能化学、環境物質化学、複合基盤化学の5研究系と先端ビームナノ科学、元素科学国際研究、バイオインフォマティクスの3附属センターに組織されて、多彩な研究を展開しています。教育面においては、それぞれの研究領域が本学の理学、工学、農学、薬学、医学、情報学の6研究科11専攻に所属し、留学生約60名を含む大学院生約200名の研究指導を行うとともに、学部教育や全学共通教育にも貢献しています。
化研では、化学関連分野を深耕する国際的ハブとなる「国際共同利用・共同研究拠点」(化学関連分野の深化・連携を基軸とする先端・学際グローバル研究拠点:平成30年度文部科学省認定)や「オンサイトラボラトリー」(京都大学上海ラボ:令和元年度京都大学認定)などの活動を通じて、国際共同研究の一層の促進、国際学術ネットワークの充実、国際的視野をもつ若手研究者の育成に取り組んでいます。国内および学内においては、大学間連携事業「統合物質創製化学研究推進機構」、次世代加速器研究における理研との連携、京都大学研究連携基盤のもとで展開される「未踏科学研究ユニット」(持続可能社会創造ユニット)などにも参画しています。令和3年度には「京都大学スピントロニクス学術連携研究教育センター」を設置し、スピントロニクスを核とした異分野横断型の国際的学術連携ネットワークの構築を目指しています。
本年度は、国立大学法人としての第4期、および国際共同利用・共同研究拠点としての第2期の初年度となります。これまでに培った国内外の連携ネットワークを基盤として、個々の研究の先鋭化、横断的研究の融合、創造的新分野の開拓を加速させるスタートの年と位置付けます。一方、化研のさらなる発展のためには避けて通れない課題である、女性教員比率の向上、次世代若手研究者の育成、時宜に応じた組織再編の検討については逸早く取り組まなければなりません。中長期的目標を議論しつつ、現行体制とのバランスを図りながら、着実に歩みを進める1年にしたいと考えています。
我々を取り巻く世界は今まさに転換期を迎えており、経済成長は地球温暖化や社会的格差の拡大などの様々な問題を顕在化させています。新型コロナウイルス感染症では多くの方が亡くなり、社会全体が深刻なダメージを負いました。これらの問題を克服し、持続的発展へと繋げるために、科学・技術は最も頼るべき存在として、確かな希望の光であり続けなければなりません。化研は、化学分野を中心とした先駆的・横断的研究を通じて、学理の探求のみならず社会の持続的発展に資するよう、これからも挑戦を続けます。科学・技術の最先端を切り拓く化研からの情報発信に今後ともご注目ください。
今年度、私は辻井敬亘前所長の後任として所長を拝命しました。梶弘典、栗原達夫の両副所長、小野輝男国際共同研究ステーション長をはじめ教職員全員の協力を得て微力を尽くす所存です。皆様のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。
2022年4月