山子 茂教授、茅原 栄一特定助教、岩本 貴寛さん、高谷 光准教授「『ボール状』の新しい三次元炭素ナノ分子の化学合成に成功」(2013年10月29日「Nature Communications」誌にオンライン公開)

平成25年10月 トピックス

山子 茂教授、茅原 栄一特定助教、岩本 貴寛さん
(材料機能化学研究系 高分子制御合成研究領域)
高谷 光准教授

(元素科学国際研究センター 典型元素機能化学研究領域)


左から茅原特定助教、岩本さん、高谷准教授、山子教授

この研究成果は、2013年10月29日にNature Communications誌にオンライン公開されました。
 材料機能化学研究系 高分子制御合成研究領域の山子茂教授、茅原栄一特定助教、岩本貴寛さん、元素科学国際研究センター 典型元素機能化学研究領域の高谷光准教授らの研究グループは、ベンゼン環が三次元的につながった「ボール状」構造を持つ、新しい炭素ナノ構造体の化学合成に成功しました。
 フラーレンやカーボンナノチューブに代表される三次元構造を持つ炭素ナノ分子は機能の宝庫であり、電子材料や光電子材料をはじめとする有機エレクトロニクス分野での応用が期待されています。一方、これら分子の入手は、アーク放電などの物理的手法によるため、得られる分子の構造が大きく限定されていました。
 本研究グループは、独自の合成手法を用いることで、従来法では達成困難な新しい三次元炭素ナノ分子の合成に成功しました (図1)。具体的には、六つの白金原子と四つのベンゼン単位との組み合わせにより正八面体構造を持つ白金錯体を「組織化」に類したプロセスにより生成した後で、白金原子を除去することにより、市販の試薬からわずか五段階で合成を達成しました。さらに、その分子の光物性や酸化還元特性、および、電荷移動度などの基礎物性の測定も行った結果、その分子を有機ELや有機半導体などに用いられている電荷移動材料などに利用できる可能性が示されました。得られた構造体の構造を大型放射光施設SPring-8を用いて決定したところ、その分子はベンゼン環が三次元的につながった「ボール状」構造を持つことがわかりました(図2)。
金属と配位子との「自己組織化」による炭素ナノ分子以外の三次元構造体の合成は多くの例があることから、この方法を応用することで、様々な新規三次元炭素ナノ分子の合成が可能になると期待されます。また、新しい炭素ナノ構造体の創製研究のみならず、有機ナノエレクトロニクス材料へ大きなインパクトを持つものと期待されます。
 
図1 「ボール状」の新しい三次元炭素ナノ分子の合成

図2 X線結晶構造解析によって決定した「ボール状」三次元炭素ナノ分子の構造

・京都新聞(10月30日 27面)、日経産業新聞(10月30日 16面)、日刊工業新聞(10月30日) に掲載

 本成果は、JST戦略的創造研究推進事業(CREST)研究領域「プロセスインテグレーションに向けた高機能ナノ構造体の創出」(入江正浩 研究総括)の研究課題「超分子化学的アプローチによる環状π共役分子の創製とその機能」(研究代表者:山子教授)によって支援されました。