菅又 功さん、笹森 貴裕准教授、時任 宣博教授「新しい2価テルルカチオン種の発生に成功」(2012年1月11日「European Journal of Inorganic Chemistry」誌にオンライン公開)

平成24年3月 トピックス

菅又 功さん、笹森 貴裕准教授、時任 宣博教授
( 物質創製化学研究系 有機元素化学領域)


時任 宣博教授、菅又 功さん、笹森 貴裕准教授(左より)

有機元素化学研究領域の菅又 功さん(博士課程3年)、笹森 貴裕准教授、時任 宣博教授らは、これまで明らかではなかった2価一配位のカルコゲンカチオン種の性質を解明するため、16族元素のなかでも特にテルルを用い、2価一配位のテルルカチオン種RTe+の発生を得ることで、その性質を明らかにしました。

 2価一配位のカルコゲンカチオン種RCh+ (Ch = S, Se, Te)は、オレフィンの官能基化反応の鍵となる反応中間体として重要であるばかりでなく、高機能性物質であるポリカルコゲニドの反応中間体としても考えられており、近年注目を集めている化合物です。しかしながら、このような2価一配位のカルコゲンカチオン種は極めて反応活性であり、これまでに安定な化合物として単離された例はなく、それらの発生の確認や捕捉例すら、ほとんど報告されておらず、詳細な性質は全くもって判っていませんでした。

 そこで我々は、2価一配位のカルコゲンカチオン種の本質的な性質を解明するべく、16族元素のなかでも特にテルルを用い、またかさ高い置換基であるBbt基(図参照)の安定化効果により2価一配位のテルルカチオン種RTe+を得ようと考え、研究を開始しました。そこで2価テルルハロゲン化物の脱ハロゲン化反応による2価テルルカチオン種発生を検討し、その結果、ジテルリドジフルオリド、モノブロミドともに脱ハロゲン化が進行し、同一の生成物を与えることが判りました。ジメチルブタジエンやホスフィンによる捕捉反応の結果からその生成物が2価テルルカチオン種RTe+であることが確認されました。これらのことからこの2価テルルカチオン種はホスフィンからの配位を受けやすく、またブタジエンとの[1+4]付加環化反応が容易に進行する化学種であることがわかりました。また得られましたジエン付加体の熱分解反応により、レトロ[1+4]付加環化反応が進行し、2価テルルカチオン種が再発生することを見いだしました。これらの結果より、2価テルルカチオン種の性質に関する知見が深まり、本研究分野に大きく貢献することができました。