花が蜜を作る器官「蜜腺」を育てる仕組みを解明 ―DNAが輪をつくり、成長を促す―
公開日:2026年10月19日
本研究成果は、2026年10月17日に、英国の国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
花の蜜は、おしべの根元などにある小さな器官「蜜腺」で作られます。しかし、蜜腺がどのように育ち、蜜を分泌するための準備を整えるのか、その仕組みは十分に分かっていませんでした。京都大学化学研究所 山口暢俊 教授、奈良先端科学技術大学院大学 飯村秀明 博士課程学生(研究当時、現:かずさDNA研究所研究員)、伊藤寿朗 教授らの研究グループは、シロイヌナズナを用いて、DNAが輪をつくることで、蜜腺の成長に必要な遺伝子の働きが高まる仕組みを明らかにしました。遺伝情報を担うひも状のDNAには、遺伝子の働きを高める調節領域があります。CRCとMYBというタンパク質が、離れていた遺伝子と調節領域が近づけ、間のDNAが輪のような形にします。これにより、蜜腺の成長を支える遺伝子の働きが高まります。さらに、CRCは、蜜の材料となる糖の輸送や、香り成分の一種であるテルペンの合成に関わる遺伝子の働きも調節していました。本成果から、CRCが蜜腺の成長を促すとともに、蜜の分泌や香り成分の合成に関わる遺伝子の働きを調節し、器官の成長と機能の両方を支えることが見えてきました。

シロイヌナズナの蜜腺と、その成長を支える遺伝子調節の仕組み。CRCとMYBタンパク質がDNAのループ形成を促し、MAB4遺伝子の働きを調節することで、蜜腺の成長を支えます。 作成者:山口暢俊/生成AI:ChatGPT(GPT-6.1 Sol)
●用語解説●
シロイヌナズナ:アブラナ科の小さな植物。世代が短く、遺伝子を調べるための情報や実験材料が整っていることから、植物研究で広く使われています。
調節領域:遺伝子の働きの強さや、働く場所などを調節するDNA上の領域。本研究で調べたMAB4遺伝子の下流領域は、遺伝子の働きを高める「エンハンサー」として機能します。
テルペン:植物が作る多様な化合物の総称。花の香りを構成する成分も含まれます。本研究では、テルペンを合成する酵素の遺伝子がCRCによる調節を受けることを示しました。
研究者のコメント
「花の蜜を作る小さな器官の中で、DNAの離れた部分が近づき、成長を支える遺伝子の働きが高まる。そのつながりが今回の研究の面白さです。さらに、同じ調節役が糖の輸送やテルペンの合成に関わる遺伝子にも働きかけていました。器官の形を作る仕組みと、その器官が役割を果たす仕組みを一緒に理解することで、花の小さな器官に備わる精巧な仕組みを、今後も明らかにしていきたいと考えています。」(山口暢俊)
「花の蜜を作る小さな器官の中で、DNAの離れた部分が近づき、成長を支える遺伝子の働きが高まる。そのつながりが今回の研究の面白さです。さらに、同じ調節役が糖の輸送やテルペンの合成に関わる遺伝子にも働きかけていました。器官の形を作る仕組みと、その器官が役割を果たす仕組みを一緒に理解することで、花の小さな器官に備わる精巧な仕組みを、今後も明らかにしていきたいと考えています。」(山口暢俊)
詳しい研究内容について
花が蜜を作る器官「蜜腺」を育てる仕組みを解明 ―DNAが輪をつくり、成長を促す― [PDF]
花が蜜を作る器官「蜜腺」を育てる仕組みを解明 ―DNAが輪をつくり、成長を促す― [PDF]
研究領域情報
生体分子情報
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京都大学 化学研究所
国際共同利用・共同研究拠点