波として伝わる磁気振動の周波数の瞬間切替に成功 ―超低消費電力情報処理へ道―
公開日:2026年5月21日
本研究成果は、2026年3月12日に国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
京都大学化学研究所 塩田陽一 准教授、小野輝男 教授らの研究グループは、韓国科学技術院(KAIST) Kab-Jin Kim 准教授の研究グループ、同大学 Se Kwon Kim 准教授、蔚山大学 Sanghoon Kim 准教授の研究グループと共同で、二つの磁石の磁極が逆方向に結合した人工反強磁性体)において、波として伝わる磁気振動(マグノン)の異なる振動モード間を瞬時に切り替える現象を観測しました。
反強磁性体中を伝播するマグノンには複数の振動モードが存在し、それらを高速かつ効率的に制御する新たな原理の実現が求められていました。今回、研究グループは、人工反強磁性体を伝播する二種類のマグノン振動モード(音響モードと光学モード)に着目し、特定条件下において振動モードが瞬時に切り替わる「モード変換現象」を観測しました。さらに、外部から与えるマイクロ波励起の強度や磁場を制御する事で、マグノンの周波数が数GHz以上にわたって急峻に変化することを明らかにしました。この成果は、複雑な電子回路を用いずにマグノンの周波数制御を実現できる新原理を示すものであり、将来的には超低消費電力の情報処理技術やニューロモルフィック計算、次世代スピントロニクス素子への応用が期待されます。

図 非線形マグノン散乱過程の概略図
クレジット:Nature Communications(CC BY-NC-ND 4.0)
クレジット:Nature Communications(CC BY-NC-ND 4.0)
●用語解説●
人工反強磁性体:非磁性層を介して二つの磁性層の磁極が逆方向に結合した構造。非磁性層の膜厚に依存して、平行または反平行に結合させることができ、本研究では反平行に結合させるようにルテニウムの膜厚を設定した。
マグノン:スピン(微小な磁石)の歳差運動が空間的にずれて波のように伝わっていく現象(スピン波)を量子力学的に取り扱ったもの。
研究者のコメント
「今回の成果は、海外の共同研究グループとの密接な連携の中から生まれました。最初に実験結果を受け取った際には、これまでに見たことのない振る舞いに大きな驚きを感じました。一方で、その物理的な起源を理解することは容易ではありませんでした。私たちは、自分たちが得意としてきた光による磁化ダイナミクス測定や解析手法を用いることで、そのメカニズム解明に貢献できたことを大変うれしく思っています。国際共同研究の面白さと重要性を改めて実感した研究でした。」(塩田 陽一)
「今回の成果は、海外の共同研究グループとの密接な連携の中から生まれました。最初に実験結果を受け取った際には、これまでに見たことのない振る舞いに大きな驚きを感じました。一方で、その物理的な起源を理解することは容易ではありませんでした。私たちは、自分たちが得意としてきた光による磁化ダイナミクス測定や解析手法を用いることで、そのメカニズム解明に貢献できたことを大変うれしく思っています。国際共同研究の面白さと重要性を改めて実感した研究でした。」(塩田 陽一)
詳しい研究内容について
波として伝わる磁気振動の周波数の瞬間切替に成功 ―超低消費電力情報処理へ道― [PDF]
波として伝わる磁気振動の周波数の瞬間切替に成功 ―超低消費電力情報処理へ道― [PDF]
研究領域情報
ナノスピントロニクス
ナノスピントロニクス
京都大学 化学研究所
国際共同利用・共同研究拠点