有機半導体薄膜の多形進化を解明 ―隠された薄膜相を実証―

公開日:2026年1月22日
本研究成果は、2026年1月21日に国際学術誌「Chemistry of Materials」に掲載されました。 

 京都大学化学研究所 塩谷暢貴 助教、長谷川健 教授の研究グループは、グラーツ工科大学 Roland Resel 教授、Egbert Zojer 教授らとの共同研究成果として、有機半導体が基板上でつくる厚さ数ナノメートルの「超薄膜」の構造を分子レベルで正確に解明することに成功しました。これまで、有機材料が薄い膜を形成すると、単結晶とは異なる構造が現れることは知られていましたが、その最も薄い「単分子層」の構造を直接識別することは困難であり、多くの材料で未解明のままでした。
 本研究では、代表的な有機半導体であるジナフトチエノチオフェン(DNTT)を対象に、高分解赤外分光法、微小角入射X線回折、量子化学計算を組み合わせる独自の手法を用いて、膜厚に応じて出現する3種類の結晶構造(単分子膜相、薄膜相、バルク相)を段階的に明らかにしました。特に、DNTTの薄膜相と単分子膜相の存在を分子レベルで初めて明確に示し、その結晶構造を正確に決定した点が大きな成果です。
 今回の成果は、有機エレクトロニクス分野における薄膜形成の理解を大きく前進させ、センサーやトランジスタなど次世代デバイスの性能向上につながると期待されます。今後は、他の材料系への適用や、界面構造の精密制御技術への展開が見込まれます。

 

 
図:有機薄膜材料が段階的な多形転移を示すことを表した模式図
 
研究者のコメント
「多くの有機半導体材料が薄膜相を有する中、DNTTは多形を持たない薄膜材料として長年認識されていました。本研究成果は、その長年の理解を覆し、薄膜相や単分子膜相がDNTTを含む棒状分子に共通の性質であることを強く裏付けるものです。この成果は、赤外分光法、X線回折、量子化学計算のそれぞれの専門家の知恵が結集したことで成し遂げられていることも強調されます。」(塩谷暢貴)
 
 
研究領域情報
分子環境解析化学