多分岐ポリマーの自己相似的構造の解明 ―多分岐ポリマーの材料創製利用への貢献―

公開日:2025年7月17日
本研究は、2025年7月11日にアメリカ化学会の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。 

 化学研究所 Tianxiang TONG 博士後期課程学生、木舩雅人 博士前期課程学生(研究当時)、登阪雅聡 准教授(研究当時、現 福井大学繊維・マテリアル研究センター 教授)、松宮由実 准教授(現 大阪大学大学院理学研究科教授 兼任)、渡辺宏 教授(研究当時、現 中国科学院長春応化研究所客員教授)、山子茂 教授らの研究グループは、山子らがすでに開発していた有機テルル化合物を用いたラジカル重合で合成された多分岐高分子(HBP)に対して動的粘弾性の解析を行い、この高分子がデンドリマーと呼ばれる枝状高分子と同様の階層的分岐構造を持つことを明らかにしました。従来法では、デンドリマー状構造を持つHBPを一段階の重合で合成することは不可能であるとされてきました。しかし、今回の研究により、山子らが報告していた方法を用いることでこの合成が可能であることが実証されました。さらに、反応の精密制御によって、HBPの粘弾性などの物性を制御できることも明らかにしました。この成果は、分岐構造を精密に制御した高分岐ポリマーの物性設計に新たな指針を与えるとともに、高分子材料の新規機能化に貢献することが期待されます。

 

合成した第4世代HBPの模式図とその緩和過程の模式図
 
研究者のコメント
 松宮先生、渡辺先生のご協力を得て、初めて動的粘弾性の測定を行いました。私自身はわからないことだらけでしたが、両先生の親切・丁寧なご指導と学生さんの奮闘により、当初予想していた以上の成果を挙げることができました。現在、我々の研究に似たHBPの合成研究がいくつか出てきていますが、それらの研究では誰も分岐構造の制御を明確にしていません。本研究結果は動的粘弾性測定が分岐構造制御の証明の良い目安となることを示した点でも重要であり、この分野の発展に寄与する成果であると考えています。(山子)