イネの成長調節ホルモンの新しい不活性化機構を解明 ―イネはジベレリンを段階的に不活性化する―
公開日:2025年6月5日
本研究は、2025年6月4日に米国の国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載されました。
日本では米の不足や価格高騰が続いており、米の生産性を高めることは農産業における重要な課題の一つです。植物は成長の調節や生育環境への適応のために、植物ホルモンと呼ばれる様々な分子を作ります。その一つであるジベレリンは、葉や茎の伸長や種子の発芽を促進するといった働きを持ち、「緑の革命」と呼ばれる農業革命に利用されるなど、農業においても非常に重要なホルモンです。京都大学化学研究所 石田俊晃 博士後期課程学生(研究当時)、増口潔 同助教、山口信次郎 同教授、中国科学院 Zuhua He 教授、福建農林大学 Shubiao Zhang 教授らの国際共同研究グループは、イネから発見した「EUI2」という酵素タンパク質がジベレリンの働きを低下させ、イネの先端の節の間(最上位節間)の長さを巧妙に調節していることを明らかにしました。イネは最上位節間が十分に伸長することで穂を出し、種子を作ることができます。また、EUI2が存在しない変異体(eui2変異体)は、「ハイブリッド米」と呼ばれる優れた性質を持つ雑種米を開発するために利用されています。今回の発見は、ジベレリンの働きを低下させる新たなメカニズムの発見に加えて、私たちの重要な主食であるイネの収量増加への貢献が大いに期待される知見です。
イネの最上位節間におけるジベレリンの段階的な活性調節とEUI2の働き
研究者のコメント
「既に農業利用されている一方、その詳細が不明だったeui2変異体の解析により、イネにおける重要なジベレリンの不活性化機構を明らかにすることができました。イネがなぜ、またはどのようにしてこのシステムを備えたのかを明らかにしていくことは、他の植物にも似た機構が存在するのかを含めて興味深いことだと考えます。」(石田俊晃)
「既に農業利用されている一方、その詳細が不明だったeui2変異体の解析により、イネにおける重要なジベレリンの不活性化機構を明らかにすることができました。イネがなぜ、またはどのようにしてこのシステムを備えたのかを明らかにしていくことは、他の植物にも似た機構が存在するのかを含めて興味深いことだと考えます。」(石田俊晃)
研究領域情報
生体触媒化学
生体触媒化学
京都大学HP記事
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