エマルジョン重合によるトポロジカル共重合体の実用的合成
京都大学化学研究所 蒋語涵 博士研究員、木舩雅人 大学院生(当時)、登阪雅聡 准教授、山子茂 教授らのグループは、独自に開発した多分岐ポリマーの合成法をエマルジョン重合に応用し、様々な形態を持つ多分岐ポリマーを実用的に合成する技術を開発しました。
従来用いていた分岐モノマーでエマルジョン重合を行ってみたところ、水と相分離することが分かったため、新たにフェニルエチル基を持つビニルテルリド1を分岐誘起モノマーとして設計・合成しました。その結果、水溶性の有機テルル重合制御剤2を用い、1とアクリル酸エステルとのエマルジョン共重合を行ったところ、構造制御された多分岐ポリマーがエマルジョンとして得られました(図1a)。1と2の仕込み比を変えることで、従来の均一系と同様に分岐構造を変えて合成できると共に、分岐数を255個持つ第8世代の多分岐ポリマーも初めて合成することに成功しました(図1b)。
さらに、合成されたポリマーが水溶液に分散しているエマルジョン重合の特徴を利用すると共に、分岐誘起モノマーを加えるタイミングを制御することで、線状構造と多分岐構造を持つ共重合体(Linear-HB)、多分岐構造の先に線状構造を持つ共重合体(HB-Linear)、異なる分岐密度を持つ共重合体(HB-HB)の合成が行えることを明らかにしました(図1c)。このような異なるトポロジーからなる共重合体を効率的に合成した初めての例であり、このような共重合体をトポロジカル共重合体と名付けました。さらに、トポロジーの効果を溶液状態における固有粘度から検証を行い、意図した構造に対して期待される傾向を示しました。
この方法は、多様な構造を持つ多分岐ポリマーを実用的に合成できる技術です。この技術を利用して、所望の物性を持つ多分岐ポリマーを効率的に生産できることが期待されます。