非対称人工超格子の高いスピン流変換効率 ―次世代磁気メモリの省電力化へ期待―

本研究成果は、2023年4月26日にアメリカ化学会誌「Advanced Science」にオンライン掲載されました。 

 磁気ランダムアクセスメモリ (MRAM) は、代表的な次世代不揮発性メモリです。 MRAMはナノメートルサイズの磁石で構成されており、磁石のN極とS極の向きによって情報を記憶し、N極とS極の向きを反転させることで情報の書き込みを行います。現在主流のMRAMは電子のスピン角運動量の流れ、つまりスピン流によって書き込みを行っています。したがって、MRAMのエネルギー効率を高めるには、スピン流を効率的に生成する必要があります。京都大学化学研究所 小野 輝男 教授、島川 祐一 教授、菅 大介 准教授、蔚山大学 キム・サンフン 助教らの共同研究グループは、原子レベルの薄膜形成技術を用いて作製したW/Co/Pt非対称人工超格子(図1)が、これまでスピン流変換効率が高い元素として研究されてきたPtよりも3倍以上高い効率を持つことを見出しました(図2)。この成果は、Advanced Science (10.1002/advs.202206800) に掲載されました。
 本研究は科研費(JP26103002, JP26870300, JP17H05181, JP17J07666)、および京都大学化学研究所国際共同利用・共同拠点の支援を受けて実施されました。

図1 : Pt/Co/W人工格子の概念図と電子顕微鏡観察結果

 

図2 : 様々な材料のスピン流変換効率