世界初フィルム型ペロブスカイト太陽電池を活用した自立電源型IoT環境センサーシステムを開発

 京都大学化学研究所 若宮淳志教授、リコー電子デバイス株式会社、ニチコン株式会社の研究グループは、世界初フィルム型ペロブスカイト太陽電池を活用した自立電源型IoT環境センサーシステムを開発しました。本製品は、2019年10月15日(火)~18日(金)に幕張メッセで開催される「CEATEC 2019」に出展されました。

 
背景
 LPWAや低電力Bluetooth(BLE)など低コストかつ低消費電力のデータ通信技術の充実と人工知能(AI)によるビッグデータ分析により、IoTエッジ端末市場は大きく発展し、さまざまな状況で活用されることが予測されます。IoTエッジ端末を商用電源に接続して使う場合は問題ありませんが、電源を確保できないところに設置する場合には、必ず蓄電デバイスが必要となります。蓄電デバイスとして多くの場合に一次電池が使用されていますが、耐用年数が短いために定期的に交換しなければならないという課題があります。その課題に対して、蓄電デバイスを充電可能な二次電池に変更し、光・温度・振動・電波などのエネルギーを電気に変換するエナジーハーベストと一緒に搭載することで自立化し、メンテナンスフリーにすることが可能となります。
 
開発したシステムの詳細内容
 この度、京都大学の若宮教授らが開発したフィルム型ペロブスカイト太陽電池、リコー電子デバイス株式会社の電源IC、ニチコン株式会社の小形リチウムイオン二次電池を使用した、自立電源型IoT環境センサーシステムを構築することに成功しました。本システムは、フィルム型ペロブスカイト太陽電池で発電した電気を、エナジーハーベスト用低消費電流降圧DC-DCコンバータで降圧し、小形リチウムイオン二次電池に蓄電します。そして、蓄電したエネルギーを低消費電流昇降圧DC-DCコンバータで昇降圧し、温度、湿度 、気圧、照度を測定できるセンサーと無線モジュールを駆動させることで、 センサーが感知した情報をBluetooth(BLE)で送信し、データ収集ができる仕組みとなっています。
 今回の自立電源型IoT環境センサーシステムが実現できたのは、室内環境のような低照度下においても高い変換効率を有するフィルム型ペロブスカイト太陽電池、その発電した電気をできる限りロスを少なく変換する低消費電流DC-DCコンバータ、そして内部抵抗が低く、微小電流でも瞬時に充放電することができる小形リチウムイオン二次電池の組み合わせによります。
 
接続イメージ図

 
波及効果・今後の展望
 フィルム型ペロブスカイト太陽電池を活用した自立電源型IoT環境センサーシステムが登場することで、下記のソリューションがますます普及していくと考えています。
1.スマートホーム
家庭にIoT センサーを設置し、各部屋の温度や湿度などの情報を収集できます。温度や湿度の分布を分析することで、必要な場所にエアコンの風を送風したり、加湿や除湿をおこなったりと、人々のすごしやすい空間作りができます。
2.災害検知
家やビル、山や河川などにIoTセンサーを設置することで、火事や洪水、地震が発生した際に、素早く音声と光で危険を伝えることができます。人々はいち早く情報を入手し、避難することが可能となり、被害を最小に食い止めることができます。
3.スマートファクトリー
工場ラインや倉庫にIoTセンサーを設置することで、生産ラインの稼働状況や在庫の数量などをリアルタイムに監視することができます。その情報をもとに、生産数量調整や生産ラインの異常検知ができます。
4.スマート農業
ビニールハウスにIoT センサーを設置することで、温度や湿度、照度などを収集し、データ分析することで、植物が成長しやすい最適環境を作りだすことができます。
 
IoT市場に留まらず様々な分野で活躍が期待できるシステムであり、このシステムの特長を活かして新規市場開拓も進めていく予定です。
 

●用語解説●

IoTエッジ端末:収集したデータを無線でネットワークに送り出す端末

 

一次電池::放電のみが可能な(充電は不可)使い切りの電池

 

二次電池:充電および放電が可能で繰り返し使用することができる電池

 

エナジーハーベスト:環境発電とも呼ばれ、熱や振動、音、光、電磁波、人間の動きなどから微弱なエネルギーを収穫して観測・制御・通信などに利用する技術