「高圧法ポリエチレン工業の発祥」を示す資料が化学遺産に認定されました

 化学研究所所蔵の「高圧法ポリエチレン工業の発祥」を示す資料が、公益社団法人日本化学会の「化学遺産」に認定されました。化学遺産は、日本の化学と化学技術に関する歴史資料の中で、特に貴重なものを認定するものです。

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 今回認定された資料は、第二次世界大戦中に京都大学で開始され、戦後再開された高圧法ポリエチレン製造の中間試験に関わる設計図・研究ノート・研究報告書です。
 ポリエチレンの1種である高圧法低密度ポリエチレンは、優れた高周波絶縁性能をもち、第二次世界大戦中はレーダー製造に不可欠な材料でした。日本でも、1943年から海軍の委託を受けて、野口研究所―日本窒素肥料、京都大学―住友化学工業、大阪大学―三井化学工業の3グループで研究されました。1945年1月には、日本窒素肥料水俣工場で小規模に工業化されましたが、同年5月、空爆により設備が完全に破壊されました。戦後、京都大学で研究が再開され、1951年から1953年に連続中間試験が行われました。その後、この研究を基礎に、英国のICI社から導入した技術をもとに住友化学工業(株)が工業化試験設備を建設し、稼働させました。これは、日本での本格的な石油化学工業開始の一つとなりました。

 認定証贈呈式は、同志社大学京田辺キャンパスで開催の日本化学会第96春季年会の期間中の3月26日に行われ、時任宣博 所長と住友化学株式会社愛媛工場副工場長 溝江利之さんに手渡されました。

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左から、住友化学株式会社 溝江様、日本化学会会長 榊原様、時任所長
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