化学研究所所蔵「ビニロン」の資料が化学遺産に認定されました


羊毛様合成一号 製造工場計画書

ビニロン紡糸実験装置

 化学研究所所蔵の「ビニロン」に関する資料が、公益社 団法人日本化学会の「化学遺産」に認定されました。今回認定された資料は1942年に作成されたビニロンを工業化するための計画書とビニロン紡糸実験装置 です。計画書の表紙には桜田一郎教授の直筆で「羊毛様合成一号製造工場計画書」と書かれています。
 ビニロンは国内技術で初めて作られたポリビニルアルコールを主体とする合成繊維で、桜田一郎教授(当時京都大学工学部、化学研究所兼任)らによって発明 されました。その基礎研究は当時大阪府高槻町(現高槻市)にあった京都大学化学研究所において行われ1939年に完成しました。さらに、工業化に向けた研 究が1941年に化学研究所内に設置された財団法人日本合成繊維研究協会高槻中間試験場で開始され、1943年には連続生産をするまでになりました。この 成果は戦後に引継がれ、1948年産官学の協力のもと合成一号公社の設立によって高槻の中間試験場で工業化研究が再開されました。1949年には、この公 社は大日本紡績株式会社(通称ニチボー、現ユニチカ株式会社)に吸収合併され工業生産が開始されました。ユニチカ株式会社所蔵の工業化試験記録資料153 点と試作糸資料5点も同時に化学遺産に認定されました。ニチボーとほぼ同時期に倉敷レイヨン株式会社(現株式会社クラレ)も桜田教授の協力を得てビニロン 繊維の大規模な工業生産を開始し、我国最大のビニロン生産メーカーになりました。同社が所蔵する日本で最初に工業化された初期の糸(トウ)も化学遺産に認 定されました。
 化学遺産は日本の化学と化学技術に関する歴史資料の中で、特に貴重なものを認定するものです。認定証贈呈式が2012年3月26日に慶応大学日吉キャンパスで開催された日本化学会第92春季年会で行われ、時任前所長とユニチカ、クラレの関係者に手渡されました。


認定証

左から時任宣博所長、公益社団法人日本化学会 岩澤康裕会長、 株式会社クラレ(繊維カンパニー 繊維資材事業部長)豊浦 仁様、ユニチカ株式会社 坂越事業所(産業繊維事業本部・ビニロン製造部・製造課、技術課 課長)湯川啓次様

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