玉尾 皓平 名誉教授(化学研究所)が文化功労者

日本文化の向上発達に対して特に顕著な貢献が認められ、玉尾皓平京都大学名誉教授(元化学研究所長・元附属元素科学国際研究センター長)が平成23年度の文化功労者に顕彰されました。

 玉尾皓平先生は、昭和40年京都大学工学部合成化学科を卒業、京都大学大学院工学研究科に進学、同45年3月に博士課程を退学、同年4月に京都大学工学部助手に採用され、同61年助教授となり、平成5年に京都大学化学研究所教授に昇任、平成12年から14年まで化学研究所所長を務められ、平成15年には附属元素科学国際研究センターを設立、初代センター長をお務めになりました。大学院工学研科物質エネルギー化学専攻の協力講座として物質変換科学講座合成反応設計分野を担当し、多くの優れた後進研究者の育成にも尽力され、研究と教育、大学の管理・運営の両面で多大な貢献をされました。平成17年に退職された後、独立行政法人理化学研究所フロンティア研究システム長に就任され、平成20年には同研究所基幹研究所所長となられました。このご要職を遂行されながら、平成19年度からは科学研究費補助金特別推進研究費を獲得され、機能性有機元素化学研究ユニットにて最先端研究を率いておられます。加えて平成22年からは独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業 CREST研究「元素戦略を機軸とする物質・材料の革新的機能の創出」領域の研究統括をお務めです。これらの科学・技術の発展への顕著な貢献に加え、日本学術会議第20期、21期会員、文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術審議会専門委員などを歴任し、日本の学術研究の推進にも大きな寄与をなされました。
 玉尾先生は一貫して「元素の本質的特性に着目した物質創製」を基本概念とした元素科学研究に打ち込んでこられました。昭和47年に熊田誠教授(当時)と開発されたニッケル触媒クロスカップリング反応による新規炭素—炭素結合形成法は「熊田−玉尾反応」として広く知られており、今日の物質創製に不可欠な触媒的クロスカップリング反応という一大分野の礎となりました。また、炭素—ケイ素結合の過酸化水素酸化によるアルコール合成法の開発、官能性ケイ素アニオン化学の開拓・確立、ケイ素を含む環状化合物シロール類の簡便合成法の開発とEL発光素子の電子輸送材料としての実用化、更に最近では、テトラシラシクロブタジエンという全く新しい有機ケイ素化合物の合成と同定に成功されるなど、基礎から応用に亘る幅広い有機金属化学、元素科学および科学技術の発展に多大な貢献をされています。加えて、平成19年、文科省発行の「一家に1枚周期表」を提唱、制作を主導し一般社会への理科教育にも尽力しておられます。

 これら一連の業績が高く評価され、平成11年には日本化学会賞、平成14年にはアメリカ化学会 F. S. Kipping賞、平成15年には朝日賞、平成19年には日本学士院賞をご受賞、平成16年には紫綬褒章をご受章するなど国内外を問わず数々の賞をご受賞されました。これらに続いての今回の文化功労者ご顕彰は、私ども所員にとって誠に喜ばしい栄誉です。

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