松林伸幸助教授、松田一成助教授、村田靖次郎助手が文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞

 平成18年4月18日、科学技術分野の文部科学大臣表彰が行われ、化学研究所より松林伸幸助教授、松田一成助教授、村田靖次郎助手の3名の研究者が若手科学者賞を受賞しました。
 この賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者個人に贈られる賞です。

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◆受賞者紹介

松林 伸幸
環境物質化学研究系 分子環境解析化学研究領域 助教授 

「物理化学分野における超臨界水の構造と反応の研究」
世界に先駆けて、分子の運動と反応をリアルタイムで観測できる高温高圧NMR法を開発し、超臨界水におけるナノレベルのクラスター構造と数十フェムト秒の 高速ダイナミクスを明らかにした。溶媒効果による反応制御を目指して、エネルギー表示溶液理論を考案した。高温NMR法と組み合わせることで、水から水素 を取り出す反応として有名な水性ガスシフト反応の無触媒制御を可能とした。

 

松田 一成
元素科学国際研究センター 光ナノ量子元素科学研究領域 助教授 

「ナノ光学分野における量子構造のナノイメージング分光の研究」
現在、ナノスケールの解像度をもつ光学顕微鏡の実現が様々な研究分野で切望されています。これに対して、近接場 光学顕微鏡の心臓部分であるプローブを改良することで、その解像度を30nm まで向上させることに成功しました。さらに、極微小なナノの光を実現することで、半導体量子構造中の電子・正孔対の量子状態(波動関数)を実空間上で直接 イメージングできることを示しました。本成果は、ナノイメージング分光という新しい手法を開拓し、ナノフォトニクスの新領域を切り開いたと位置づけられま す。

 

村田 靖次郎
物質創製化学研究系 構造有機化学研究領域 助手 

「ナノカーボン分野におけるフラーレンの構造変換に関する研究」
フラーレン類は既存材料には無い様々な性質をもっているが、加工性の
乏しさや合成法自体の制約が研究の大きな障害となっていた。氏は、フラーレンのシグマ骨格の変換に取り組み、C60に「分子手術」を施すことによって、水 素分子内包フラーレンを有機化学的に合成する手法を開拓した。また、新たに開発したメカノケミカルな固体反応手法が、C60二量体・三量体をはじめ、様々 な構造のフラーレン誘導体の合成に最適であることを見出した。