第105回化学研究所研究発表会、開催

  京都大学化学研究所は、 12月2日に宇治キャンパスの化学研究所共同研究棟において、第105回化学研究所研究発表会を開催した。

 今年、化学研究所は創立 79周年(1926年創立)を迎え、挨拶に立った江崎信芳所長は、 「79年間守り続けてきた設立理念『化学に関する特殊事項の学理および応用の研究を究める』は、化学研究の本質を突いた素晴らしいもので、化学の先駆的、 先端的研究を追求している限り、対象や内容について細々と指示せず、研究者の自由に任せるという考えを表明するものです。


[上写真] 江崎所長

今さら改めて申すまでもなく、学問の自由は、知識や文化を育て、科学技術を創造する 源です。重要な現象や原理は、先の見えないことを続けて行くなかで見いだされることが多く、研究者の自発性や自由を大切にしなければ、優れた研究は育まれ ません。これからもこの理念を堅持し、化学研究所をさらに発展させていきたいと考えています」 と述べ、化研の特長を活かした分野間の融合を今後益々進めてほしいとのメッセージを伝えた。

 今回は一般講演5件と所長賞受賞講演1件に加え、初めての企画として、所長賞学生奨励賞を受賞した大学院生2名による講演も行われた。加えて、幅広い研 究分野を誇る本研究所が昨年度に採択した、異分野の若手研究者による共同研究、「化研らしい融合的・開拓的研究」の研究発表が4件行われた。

 午前の部では、小野輝男教授による「スピン流による磁性化状態制御」、西田幸次助教授による「高分子電解質溶液における相互作用反転と構造形成」の講演が行われた。


[上写真] 所長賞受賞者


[上写真] ポスターセッション会場

引き続き、優れた研究を行った若手研究者に対して授与される「所長賞」・「所長賞(学生奨励賞)」の表彰式と受賞者講演が行われた。 また、口頭発表の間には、 ポスターセッション「研究室全体の活動・成果の紹介」と「研究室のトピックスの紹介」の2系統のポスターにより、合わせて 67件の発表が行われた。

 休憩を挟み、午後の部で は、柘植知彦助手による「植物の『かたち作り』と『環境応答』を繋ぐ制御因子の解明」、服部正泰助手による「化合物構造比較法に基づく酵素反応特有な原子 変換パターンの解析」、則末和宏教務職員による「海洋のプルトニウム同位体の起源解析のための化学的アプローチ」の講演が行われた。

 本研究発表会では、所内を含む約130名の参加者を得て、化学研究所の特長である“化学を中心とした広い自然科学分野”にわたる最先端の研究成果 が発表され、それぞれに熱心な聴講と活発な討論が行われた。終了後は、研究発表会懇親会が宇治生協会館にて、教職員200名の参加を得て盛大に行われた。