「フィッシャー・トロプシュ法による人造石油 合成触媒、試作品および関連資料」が国立科学博物館「重要科学技術史資料」に登録されました(2021.09.14)

 化学研究所所蔵の「フィッシャー・トロプシュ法による人造石油 合成触媒、試作品および関連資料」が、国立科学博物館の令和3年度「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)」に登録されました。この登録制度は、日本の科学技術の発展を示す貴重な科学技術史資料や、国民生活、経済、社会、文化の在り方に顕著な影響を与えた科学技術史資料の保存と活用を図り、次世代に継承することを目的とされています。

 登録証授与式は、9月14日、東京都上野公園内の国立科学博物館にて行われました。期間中(9月7日〜9月29日)、国立科学博物館 日本館 中央ホールにて、記念のパネル展示が行われます。
  また、これらの資料の一部は化学研究所の「碧水舎」の歴史展示室にも常時展示しています。

 

選定理由
本資料は、フィッシャー・トロプシュ(FT)法による液体炭化水素(人造石油)製造の工業化用に向けて研究された触媒と合成された人造石油である。当時の緊張した国際情勢下で不足した液体燃料確保を目的に行われた。FT法は一酸化炭素と水素から人造石油を合成する触媒反応である。石油価格が高騰した際などには埋蔵量が多く広く分散している石炭や天然ガスから人造石油を作ることができる。バイオマスを利用したカーボンニュートラル燃料の製造に役立つことも期待されている。京都大学化学研究所喜多源逸研究室では、1927(昭和2)年からFT法触媒の開発研究に着手し、1937(昭和12)年からは従来のコバルトに代わる鉄系触媒に着目した。
1939(昭和14)年には試験設備での連続運転に成功し、1942(昭和17)年には北海道滝川でプラントが稼働した。多くの文献資料等も残されている。本資料は、当時 の社会背景を受けた基礎研究と技術開発や工業化の関連を示すものとして重要である。

 

リンク)国立科学博物館 産業技術史資料情報センター
第14回 〜技術の歴史を未来に生かす〜未来技術遺産 登録パネル展(2021)