化学研究所所蔵「人造石油」の資料が化学遺産に認定されました

 化学研究所所蔵の「人造石油」に関する資料が、公益社団法人日本化学会の「化学遺産」に認定されました。化学遺産は、日本の化学と化学技術に関する歴史資料の中で、特に貴重なものを認定するものです。今回認定された資料は、戦前・戦中の京都帝国大学におけるフィッシャー・トロプシュ法(FT 法)による人造石油の研究、および北海道人造石油株式会社滝川工場での、その実用化に関わる資料・試料類です。

 人造石油に関する研究と工業化は、戦前・戦中の日本での石油不足を解消するために国策として進められました。京都帝国大学の喜多源逸研究室では、1927(大正6)年から、児玉信次郎らによりFT法触媒の基礎的研究が開始され、入手容易で安価な鉄系触媒を開発しました。京大化学研究所での中間工業試験、北海道人造石油の留萌研究所での加圧式による工業試験の成功(1942 年)を経て、1944(昭和19)年8月北海道滝川市で鉄触媒本格炉の試運転が始まりましたが、まもなく終戦を迎えました。これは戦後の石油化学工業につながる事業であり、京大では燃料化学科の設立、ならびに学界・産業界に多数の有為な人材を送り出したことに繋がります。


認定証

 認定証贈呈式は、立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催の日本化学会第93春季年会の期間中3月23日に行われ、佐藤直樹所長と滝川市教育委員会の関係者にそれぞれ手渡されました。


玉尾会長から認定証を授与される佐藤所長

左から、北海道滝川市教育委員会教育長 小田真人様、公益社団法人日本化学会 玉尾皓平会長、佐藤直樹所長

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