玉尾皓平名誉教授、瑞宝重光章を受章

 平成28年11月3日、玉尾皓平名誉教授が平成28年度秋の叙勲において瑞宝重光章を受章され、11月8日、皇居において伝達式が行われました。

 玉尾先生は、昭和40年に京都大学工学部合成化学科を卒業、同大学院工学研究科に進学、同45年4月に京都大学工学部助手に採用され、同61年同助教授となり、平成5年に京都大学化学研究所教授に昇任されました。平成12年から14年まで化学研究所所長を務められ、平成15年に附属元素科学国際研究センターを設立、センター長を務められました。工学研究科物質エネルギー化学専攻の協力講座を担当し後進研究者の育成に尽力され、研究と教育、大学の管理運営において多大な貢献をされました。平成17年のご退職後、理化学研究所フロンティア研究システム長に就任され、平成20年から同研究所基幹研究所所長を務められ、平成25年から同研究所研究顧問とグローバル研究クラスタ長を務められています。玉尾先生は、このご要職にありながら、機能性有機元素化学研究ユニットを率いて最前線研究も指揮されました。また、平成22年からは科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業CREST研究「元素戦略を機軸とする物質・材料の革新的機能の創出」領域の研究統括も務められています。加えて、平成28年からは公益財団法人豊田理化学研究所所長にも就かれています。

 玉尾先生は「元素の本質的特性に着目した物質創製」を目指した元素科学研究を展開されました。とりわけニッケルやケイ素といった遷移金属および典型元素に着目し、ニッケル触媒クロスカップリング反応による新規炭素−炭素結合形成法「熊田—玉尾カップリング反応」の発見、炭素−ケイ素結合の過酸化水素酸化によるアルコール合成法「玉尾—Fleming酸化」の開発、ケイ素を含む環状化合物シロール環の簡便合成法の開発とエレクトロルミネッセンス(EL)素子への応用、新規立体保護基の開発による不安定典型元素化学種の創製と機能開拓など、数々の重要な成果を収めてきました。これらはいずれも新領域の開拓につながり、有機合成化学から新機能性物質科学に亘る広い分野の科学技術の発展に大きく貢献しました。これらの顕著な研究成果に加え、文部省学術国際局学術審議会専門委員、文部科学省研究振興局科学技術・学術審議会専門委員、文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術審議会専門委員、日本学術会議化学研究連絡委員会委員・20期・21期会員、通商産業省工業技術院産業技術審議会専門委員、新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO技術委員、平成24年度および25年度には公益社団法人日本化学会会長などを歴任され、日本の学術研究の推進にも多大な寄与をなされました。また「一家に1枚周期表」を提唱、文部科学省による制作を主導し理科教育にも取り組んでこられました。

 平成11年には日本化学会賞、平成14年にはアメリカ化学会F. S. Kipping賞、平成15年には朝日賞、平成19年には日本学士院賞を受賞、平成16年には紫綬褒章を受章、平成23年度文化功労者に顕彰されるなど数々の賞を受賞されています。今回、これらのご功績が教育および研究に長年にわたり従事し、特に重要と認められる職務を果たし成績を挙げたとして瑞宝重光章御受章の栄誉に浴されたことは誠に喜ばしいことであります。