11月28日 本館5階 所長室にて開催


出席者 江崎 信芳 (所長)
佐藤 直樹 (副所長)
時任 宣博 (副所長)
長崎 順一 (化研担当事務室長)

続編1 テーマ
「当面の課題」

目次

目指すべき研究環境

第二期中期計画に向けて

化研の一員として


目指すべき研究環境


江崎 勢いに乗って独自の発展を遂げてきた時代には、化研は終始安定していて、お互いに干渉することなく自分達の研究室のことだけ考えていればいいという雰囲気がありました。

時任 縦割り的で、横のつながりが稀薄だったかも知れませんね。

江崎 かつては「隣は何をする人ぞ」というような、互いに無関心で閉鎖的な面もありました。しかし、国立大学法人化が検討されるに至った頃からでしょうか、お互いに情報を共有しあう必要性をそれぞれが感じるようになってきました。多くの人の支持が得られなければ研究を継続するのは難しいわけですから、所内の各々が緊張感をもち、評価機能を備えた環境を常に意識しながら、研究グループ間の相互作用を活かした研究を展開していけば、力強い研究所を必ず保っていけると思うのです。

時任 全教員に対する任期制の導入もこれに関連しますね。ラボに対してではなく、個人に課せられるもので、「あまりのんびりしないように、常に目標を掲げて上昇志向で行きなさい」というメッセージが込められています。助教授と助手の場合は1期7年の任期制ですが、再任可でもありますので、いたずらに焦る必要はありません。この制度が正しく機能すれば、必ず良い方向に進むはずです。そろそろ第1期のチェックポイントを迎えようとしています。学内でも、この制度の成り行きは注目されているはずですから、うまく運用していく必要がありますね。制度の効果を人事面でうまく機能させねばなりません。評価される機会をチャンスと捉えて、どんどんアピールしていけばいい。若い先生方には、栄転するなり、昇任される機会も増えることでしょう。これが化研のドライビングフォースになっていってくれれば望むところです。近頃は学問の展開が早いですから、特に今の若い人たちにとっては、長期的な展望に基づいた研究をしにくい雰囲気があります。しかし、研究所という場所はそれができるところだと思います。統制をとりつつ、必要に応じて早い段階で修正するなり、もちろん励まし続けることで、よい研究を皆で支援できる仕組みや体制を整えていきたいものです。

佐藤 確かに近頃は、短期間に成果や評価を得なければならないというプレッシャーからか、目先にとらわれた研究に陥りがちのように思われます。

時任 最近はファッショナブルな研究が盛んですね。

佐藤 逆に、こういうときだからこそ、化研は「基盤的なこと」あるいは「萌芽的なこと」の重要性を見極めていく姿勢を忘れてはいけないと思います。

時任 31研究領域からなる、規模の大きな化研の特長を活かすためには、それぞれの研究室が各々の個性を発揮する組織づくりが理想です。全員が同じ方向を目指すのではなく、Science for Science(科学のための科学)に比重を置く人がいてもいいし、Science for Society(社会のための科学)を目指す人がいてもいい。お互いに刺激し合い、評価し合って、リアクションしながら、アクティビティーの高揚につないでいきたいですよね。

江崎 「いい研究」というのは、単に目立つとか、時代に合っているとか、資金が得やすいとか、決してそういうものではありませんし、偏った分野にあるわけでもありません。

時任 ええ、「いい研究」というのは長期的視点に立った地道な研究であることが多いですし、一見地味なものを個人の力だけでアピールするのには限界もあるので、研究所としてサポートしてあげる必要があります。外部からそういった研究が認知されるよう、折に触れて研究所の代表として送り出すべく後押ししてあげることを心がけなくてはなりません。そのためには、それに値する「いい研究」を見出す仕組みが重要で、常にアンテナを張っておき拾い落としのないよう努めねばなりません。

江崎 かつては、そういったことも含めて所長が所内の研究をディレクトした時期もありました。当時は、それでそれなりにうまくいっていたのだと思いますが、一般論として、研究所の進むべき方向は決して所長の趣味で決めるべきものではありません。かといって、大勢で議論しても意味をなさないでしょう。その意味では、所長と副所長2名によるこの体制は理想に近いと思います。3人での判断をさらに運営委員会に諮ることによって、バランスのとれた体制を維持できます。うまく運営すれば、所員一人ひとりが全体を見渡したときに、化研が今どのような方向に進もうとしているのか、「なるほど、そうか」と体験の中で認知できる体制づくりが可能だと思うのです。

時任 化研が必要性を認識して副所長体制を敷いて間もなく、全学的にも副部局長制度の必要性が議論され、他部局でも副所長や副研究科長が導入されることになったという経緯があります。部局長がオーバーワークになっていたことを如実に示すもので、執行部の補強が求められていたわけですよね。化研の常置委員会も、本来の機能を掘り起こし、それぞれ役割を果たしていけるよう整備していかなくてはいけませんね。

江崎 各委員の先生方も、研究の傍ら、各々実に多岐にわたる仕事をこなさなければなりませんから大変ですよね。

時任 メール会議を活用するなどして、意思疎通が常に保てる「風通しのいい研究所」にしていかなくてはなりませんね。江崎所長がいつもおっしゃる「ボトムアップ」、意見の汲み上げが大切です。これを重視するとあちこちから意見が出てまとまりにくいという懸念はありますが、意見は意見として、すべて吸い上げた上で取捨選択し、最後はトップダウン的に所長判断で動く、そういう形でいいと思います。

第二期中期計画に向けて

江崎 今は実に大切な時期で、今後数年の取り組みは特に重要です。第一期中期計画の成果を、まずは自己点検評価という形できちんと発表する必要があります。それと平行して、第二期をどうするか考えねばなりません。

時任 研究所としての目標を定めそのための具体的な計画を立てるというのは、初めての経験でしたからね。自分で立てた計画に縛られて、少々大変な目に合いそうな気もしますが、かといってあいまいな計画では、次期目標を設定する際に認めてもらえません。高いハードルを越えればそれだけ、さらに高いハードルにも挑めるはずです。

佐藤 ですが、中期目標や中期計画というのは、基本的には2年前に考えたことで、実際に動き始めれば当然、状況も変わってきます。総ての点で、書いたとおりにできなければならないという考えは、少しおかしいと思うんです。われわれだけではなく、どの組織でも同じだと思うのですが、少々のアソビ、つまり許容範囲があるはずです。取り組む上で忘れてならないのは、目指す目標や立てた計画について「主旨をどれだけ実現していくか」という点に集約されると思います。
時任 法人化において危惧されるのは、硬直化した評価主義の結末として、決められた期間内にたまたま達成度の低かった人達が駆逐されていく、という事態です。民間企業の場合、それは当然なことかもしれません。指標となるものへの方向付けは、トップ自らの意思で決定できるからです。会長や社長などトップが替わると会社の方向が180度変わって、ある部署が突然廃止されたりということもあります。しかし、大学はそういう場所ではありません。目標の大転換もあり得ません。進むべき方向をじっくりと見定めるための計画があって、それこそが運営基盤の礎となるべきものです。大学には、達成度評価のような成果至上主義を持ち込まないことこそ理想的です。

江崎 評価については、2006年度、ちょうど80周年を迎えるこの年に「外部評価」を受けます。この評価はとても大切です。自らの取り組みを自分たちで審査する「自己点検評価」は2005年度にかけて行いましたが、客観的な視点からの「外部評価」と組み合わせて初めて、本当の「化研の評価」になるからです。「自己評価」と「外部評価」は、今後も引き続き行っていく必要があります。偏ったところにエネルギーを注ぐのではなく、本当の意味で将来目指すべき方向を浮き彫りにする、前向きな評価に結びつくよう、ポイントを外さずに取り組めるよう枠組みを整えていきたいですね。

佐藤 外に「外部評価」を依頼するときには、まず化研内の組織全体に「何のための評価か」ということをきちんと周知した上で、お願いしないといけません。さもなければ評価のための評価、「やればいいんでしょ」というような評価への取り組みになってしまいます。その辺りのことは、一度機会を設けて、たとえば運営委員会などでしっかりと確認すべきでしょう。

時任 「外部評価」を受ける準備は、もう始めていらっしゃるのですか?

佐藤 実施的な準備は平成18年度早々から始める予定ですが、具体案の一つとしては、「外部評価」をお願いする方を「80周年記念シンポジウム」のゲストとしてお呼びするという基本プランがあります。それを実際どのような形にしていくかについては、これから練っていくところです。「何のための評価か」に立ち戻って言わせていただくと、今後化研をどうアピールしていくか、どういった分野に伸ばしていくか、という方向付けとその後押しをするためのブースターになるような評価をしていただくのが一番だと思いますね。


化研の一員として

時任 あと、自分は化研にとってどのように位置づけられるのか、どんな存在価値があるのか、ということを各自もう一度考えておきたいですね。「自分のやりたいことをさせてくれる場所だから」というだけでは、ちょっと寂しいな。そんな人ばかりでは、そのうちに化研はバラバラになってしまいますよね。

江崎 大切なバロメーターと考えたいですね。結局、化研という屋体をいい方向に進めようとすれば、そこにいる個人個人が、化研ならではという意識をもって貢献をしてくださると、強力なパワーになりますものね。

時任 「自己評価」であれ「外部評価」であれ、何かの機会に教員全員の発表会兼評価会を開催して、「あなたは化研で何を達成しましたか?」「これから何をするつもりですか?」といった点を問いかけ合って、一度、達成度とプロポーザルをお互いに認識し合うのも一案ですね。「それならば、化研でなくてもできますね」ということになれば、もう一度、化研に所属している意味を考え直してもらう必要がある。一緒にいることの意味を、もう一度みんなで考えるべきですよね。皆さんがここにいることのメリットが化研にとってのメリットにもなるように、各自アピールできるようにしていただきたいものです。
江崎 確かにそうですね。「研究専念」は素晴らしいことですが、みんなが所属する「化研」という独特の場所をいい方向へ持って行こうするときに、自分のことだけを考えていてはダメで、「化研のために何をしているか」、「何ができるか」を全員がいつも念頭に置いて行動してくださると素晴らしいですね。
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掲載編 80周年を迎えて
(黄檗24号P1,2)
続編1 当面の課題
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続編2
化研が目指す学内連携
続編3 社会への情報発信と所内連絡体制
化研創立80周年を振り返って
研究専念のできる場所
■これからの化研
■目指すべき研究環境
■第二期中期計画に向けて
■化研の一員として
外への情報発信とその体制
社会への姿勢
所内連絡会の意義
所内広報充実のポイント
21世紀COEについての今後の課題
事務部再編と宇治地区連携