化学研究所所蔵の「モノビニルアセチレン法による合成ゴム」が化学遺産に認定されました(2018.3.21)

 化学研究所所蔵の「モノビニルアセチレン法による合成ゴム」が、公益社団法人日本化学会の「化学遺産」に認定されました。日本の化学と化学技術に関する歴史資料の中で特に貴重なものが、化学遺産に認定されています。


化学遺産に認定された合成ゴム試料とその説明資料

 天然ゴムは重要な工業材料ですが、原産地は東南アジアに限定されています。そのため、第一次世界大戦中の海上封鎖によって天然ゴムの入手が困難となったドイツで、天然ゴムに匹敵する高性能の合成ゴムの開発が始まりました。その後、各国で多種の合成ゴムが開発されましたが、その鍵は、合成ゴムの原材料のひとつであるブタジエンの工業的合成でした。
 京都大学工学部の古川淳二名誉教授は、第二次世界大戦開始前に、この工業的合成について画期的な「モノビニルアセチレン法」を開発していましたが、さらに、この方法で合成したブタジエンとアクリロニトリルを原材料としてNBR と呼ばれる合成ゴムを量産する研究に着手し、1942年には、化学研究所において日産200kgの工業化試験に成功しました。この時の NBR試料が今回の化学遺産です。工業化試験の設備は、その後、住友化学工業新居浜工場に移設され、日本における NBRの工業的生産の礎となりました。
 化学遺産認定証の贈呈式は、日本大学理工学部 船橋キャンパスで開催の日本化学会第98春季年会の期間中の3月21日に行われ、時任宣博 化学研究所長と高木康博 東京農工大学科学博物館長に認定証が手渡されました。


左から、高木館長、山本尚 日本化学会長、時任所長

認定証

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