所長挨拶
    化学研究所長 佐 藤 直 樹
    (複合基盤化学研究系 分子集合解析研究領域 教授)
     

     「化学研究所は化学に関する特殊事項の学理および応用の研究を掌る」として、1926 年に京都大学で最初に設立された附置研究所が化学研究所です。本学の基本理念にもある「研究の自由と自主」を旨として、研究教育分野を単純明快に指す研究所名はそのままに、上記の設置理念の時宜を得た実践を図りつつ研究活動を展開してきました。化学全般にわたり先駆的・先端的な研究を繰り広げるとともに、関連する物理学、生物学、情報学の分野にも研究の幅を拡げることにより、多くの優れた成果を挙げてまいりました。現在は、専任教員約100名、大学院生約240名、研究員約50名からなる32研究領域(研究室)が、物質創製化学、材料機能化学、生体機能化学、環境物質化学、複合基盤化学の5研究系と先端ビームナノ科学、元素科学国際、バイオインフォマティクスの3附属センターを構成しており、各研究領域が特色ある研究を進める一方、適宜連携も遂行しています。なお、他に寄附研究部門と客員研究領域も設けています。各研究領域は、本学の大学院理学、工学、薬学、農学、医学、情報学、人間・環境学の7研究科13専攻にわたる協力講座をそれぞれが担当しており、高度な専門に加えて広い視野を身につけた先端的な研究者の育成にも努めています。
     また、化学研究所は、文部科学大臣に認定された共同利用・共同研究拠点として2010年度から「化学関連分野の深化・連携を基軸とする先端・学際研究拠点」の活動を開始しました。化学関連分野でご活躍の研究者各位のご要望を踏まえつつ、化学研究所の広くて深い研究姿勢と豊富な連携実績を活かして、新分野を拓く共同利用・共同研究を推進します。加えて、国内外の研究機関・組織との間の、またそれら相互の研究協力・連携に資するハブ環境の構築と、それを通じて次代を担う若手研究者の育成も拠点活動の一環と捉えています。多様で広範な化学研究の展開を図る本拠点のこれらの活動については、皆様のご理解とご支援・ご協力が不可欠ですので、今後ともよろしくお願い申しあげます。なお、国際性の観点から付言すれば、化学研究所は国外の研究組織との間に京都大学の総ての部局の中で最も多くの部局間学術交流協定を締結しており、それらの組織との間を中心に大学院生を含む若手研究者の交流支援も独自に行っています。
     2011年3月の東日本大震災を筆頭にさまざまな災害に見舞われ、また世界情勢にも根差した問題も含む多くの課題が累積して先行きに不透明感を与えているわが国では、持続発展の可能な社会を如何にして構築するかが今まさに問われています。自然・人工の区別なく物質が関わる多様な問題を対象として、基礎研究に軸足を置きつつも設置理念に明記された応用にも不断に取り組んでいる化学研究所にとって、材料・エネルギー・生命などに関わる広範な物質科学の重要課題の解決に注力してその命題に応えることが肝要と思われます。そして、そのような研究展開により新たな知の創出を導くことこそ化学研究所を構成する総てのメンバーにとっての目標です。ところで、研究者個々の創意工夫を伸ばし活かすには、手を携えて前に進む協力関係がさまざまな点で必須です。従って、上述の目標に向かい化学研究所が邁進するためには、これまでに培われてきた化学を中心とする「多分野共同体」としての一体感を再認識し、皆が協調して問題に取り組む姿勢が大切と考えています。
     なお、このたび私は、3期4年間お務めいただいた時任宣博教授の後任として化学研究所長を拝命いたしました。そこで、二木史朗教授には引き続き、また渡辺宏教授に代わって辻井敬亘教授に副所長をお願いし、その協力を得て化学研究所の運営に微力を尽くす所存です。ことに、化学研究所らしいのびのびとした独創的な研究が今後も次々と生み出され、新分野を拓く連携・融合研究が拠点活動とも相まって力強く展開されるよう、その環境の維持改善を念頭に置いて臨みたいと思いますので、広く皆様のご支援に与れれば幸甚です。

     2012年 4月