平成23年7月 トピックス 松本 和也さん、島川 祐一 教授ら (元素科学国際研究センター 無機先端機能化学研究領域) 人工超格子での酸素イオン拡散の制御に成功 −固体燃料電池や酸素貯蔵材料の開発へ向けた新展開− |
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この成果はScientific Reports電子版(6月30日公開)に掲載されました。 |
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| 無機先端機能化学研究領域の松本 和也 さん(博士課程2年)、河合 正徳 博士、境口 綾 さん、市川 能也 特定助教、島川 祐一 教授と複合ナノ解析化学研究領域の治田 充貴 博士、倉田 博基 准教授の研究グループは、酸化物人工超格子において、低温(300 °C以下)での還元・酸化反応が層選択的に起こることを見出し、人工超格子をもちいることで酸素イオンの拡散(移動)方向の制御が可能であることを実証しました。この研究成果は、酸化物人工超格子の新材料開発が将来の環境・エネルギー分野での応用展開にも繋がることを明らかにしたものです。 | |
| 持続可能な社会の構築に向けて、環境・エネルギー問題は人類が解決しなければならない大きな課題です。近年、その解決のための新しいエネルギー源が大きな注目を集めています。特に、水素と酸素の化学反応からエネルギーを取り出す燃料電池は、大きなエネルギー密度だけでなくクリーンなエネルギー源としても大きな期待を寄せられています。しかしながら、鍵となる固体電解質における酸素イオンの移動が通常は700 °C以上の高温でしか起こらないため、広範な実用化のためには、より低温でイオンが移動するような新しい材料を開発することが必要でした。 | |
研究グループが注目したのは、酸素欠損ペロブスカイト構造酸化物であるCaFeO2.5です。この材料が低温でも酸素の移動を示すことは2010年の3月に同グループが発見してNature Chemistry誌などに報告してきました(平成22年2月トピックス参照)。今回は、パルスレーザー蒸着法による薄膜成長技術を用いて、このCaFeO2.5とチタン酸ストロンチウムSrTiO3を原子層レベルで制御して交互に積層し、人工超格子としたものをもちいたことが特徴です。この酸化物人工超格子をアルカリハイドライド(CaH2)とともに熱処理すると、280 °Cでの低温においても還元反応が進行します。この時、人工超格子を構成するCaFeO2.5層のみが還元されて酸素イオンを放出しCaFeO2に変化しますが、SrTiO3層は還元されずに変化しないことが明らかになりました。また、還元されて酸素が抜けた人工超格子薄膜を酸素雰囲気下で熱処理すると、CaFeO2層に酸素が取り込まれ、元のCaFeO2.5からなる人工超格子に戻ることも確認されました。 |
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![]() 図 酸化物人工超格子での層選択的還元・酸化反応
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| この結果は、酸化物人工超格子において、還元・酸化反応が層選択的に起こることを示しています。さらに、還元・酸化反応に伴う酸素イオンの拡散(移動)は、安定なチタン酸ストロンチウム層により垂直方向の移動がブロックされ、2次元的な層内に閉じ込められていることを示しています。 | |
酸化物人工超格子において、このような低温(300 °C以下)での還元・酸化反応が層選択的に起こることを見出したのは、はじめてです。また、人工超格子をもちいることで酸素イオンの拡散(移動)方向を2次元的な層内に制限できることが実験的に示されたことで、固体酸化物燃料電池の電解質での酸素イオンの移動の制御や2次元の新しい酸素貯蔵材料としての応用展開にも繋がることが期待されます。特に原子層レベルで積層構造を制御した人工超格子では、適当な厚さをもつ層状構造を任意の繰り返し周期で作製することが可能であり、層状構造を変えることで、酸素イオンの移動を制御することも可能となります。さらに、今回作製した酸化物人工超格子は、鉄(Fe)やチタン(Ti)といった安価で安全なありふれた元素のみで構成されており、材料開発における元素戦略の観点にも沿ったものとなっています。 |
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| なお研究の一部は、独立行政法人科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「元素戦略を基軸とする物質・材料の革新的機能の創出」研究領域(研究総括:玉尾皓平 理化学研究所 基幹研究所 所長)における研究課題「異常原子価および特異配位構造を有する新物質の探索と新機能の探求」(研究代表者:島川祐一、研究期間:2011年度〜2015年度)の支援を受けて行われたものです。 |
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| この成果は、英国ネイチャー出版グループが専門領域の科学を横断するオンラインジャーナルとして新たに創刊したScientific Reportsに、平成23年6月30日に公開されました。 | |
| 京都新聞(7月1日 29面)および日刊工業新聞(7月1日 21面)に掲載されました。 | |
●用語解説● |
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